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新刊
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アメリカ文学・アメリカ文化

神聖な言葉の世界
現代北米先住民文学の「夜明け」
著者 横田 由理
N・スコット・ママデイとレスリー・マーモン・シルコウの作品世界の検討を中心に据えて,著者の数十年にわたる現代ネイティヴ・アメリカン文学研究の結実を余すところなく伝える。北米先住民自身の言葉で創作された「神聖な言葉の世界」の検討を通して、白人主流社会が作り上げた価値観や西欧文化中心になりがちな世界の再考をも促す論考の集大成。
判型・頁数 A5判上製・420頁
定価 本体3,800円+税
ISBN 978-4-7553-0438-5

目次

 

序 章

1. 現代北米先住民文学の 「夜明け」―N・スコット・ママデイとレスリー・マーモン・シルコウ

2.「パワー文学」 と神話と 「神聖な言葉の世界」

3.「神聖な言葉の世界」 の自然観土地と共同体

 

第1章 『言葉でできた人』 の意味するもの

1. ママデイの言語観と口承伝統

2. 人と言葉存在と想像力

3. カイオワの物語と言語

4. 白人社会と言葉

5. ママデイと言語

 

第2章 南西部の口承物語―思考と創造と存在

1. 物語の始まりと想像/創造の力

2.『儀式』という物語と部族神話と神話的アイデンティティ

3. 現代の物語と神話的アイデンティティ

4. 口承伝統の継承と現代の物語

5. 土地に根差した部族の物語とママデイの演劇集

六 歴史の語り直しと口承物語の継承

 

第3章 南西部の 「双子の兄弟の物語」 と 「治癒への旅の物語」

1.「カインとアベルの物語」 としての 『夜明けの家』

2. 南西部の 「双子の兄弟の物語」と『夜明けの家』

3. シルコウの 「双子の兄弟の物語」―「治癒への旅の物語」 としての 『儀式』

4.「英雄伝説」 としての 「治癒への旅の物語」

5.『死者の暦』 と癒しをもたらす 「双子の兄弟の物語」

 

第4章 大地を中心とする物語

1. アメリカの 「土地の倫理」―人と土地の関係性

2. 大地に根差したアイデンティティと自己回復

3. 土地の物語創世神話と移動の物語と現代の土地の物語

4. 土地との関係の変容と 「非・場所」 の意味するもの

5. 語り直される「大地を中心とする物語」―土地の再神話化

 

第5章 空に親族を持つということ―天体表象を通して見る北米先住民の自然観と宇宙

1.『夜明けの家』 と 『儀式』における 「太陽の物語」 と太陽信仰

2. シルコウとママデイの作品を通して見る 「太陽の物語」

3.「星と星座にまつわる物語」 と 「民族的な記憶/血の記憶」混沌から秩序へ

4.「月の物語」 と再生と循環永遠回帰のシンボルとしての月

5 天体表象と 「神話的なこころ」「生きた神話」 と 「神話の知」

 

6章 熊物語に見られる北米先住民の自然観―ママデイとシルコウの 「熊物語」

1.『夜明けの家』 の 「熊物語」

2.『いにしえの子』 と 「熊になった少年の物語」

3. シルコウの 「熊物語」

4.「熊物語」の伝えるもの

 

7章 人であること・熊であること―『いにしえの子』 とベア・アイデンティ

1. 自己喪失と自己アイデンティティの模索

2. セットの 〈変身〉 の意味するもの

3.「ピーガン族の野営地を訪れた謎の少年の物語」

4. 近代的自己アイデンティティーと「人であること」と「熊であること」

 

8章 蜘蛛という表象と多文化共存社会への展望

1.「アナンシの物語」 から 「ウサギどんの物語」 へ―表象の推移とその背景

2.「蜘蛛の女」 と 「蜘蛛のお祖母さん」

3.「蜘蛛のお祖母さん」 とシルコウの作品

4.「蜘蛛のお祖母さん」 とママデイの作品

5.「蜘蛛の巣」 とストーリーテリングと他民族共存の社会

 

9章 蛇の表象―南西部の蛇と 〈パラダイス〉 の蛇

1.〈石の蛇〉 のメッセージラグーナ・プエブロと核開発

2. 「エデンの園」 の蛇と 『砂丘の中のガーデン』 の蛇と前キリスト教時代の蛇

3. 再生と治癒の象徴としての蛇

4. 蛇と水と木

5. 蛇と共に生きる

 

10章 至高の霊鳥としての鷲と囚われの鷲―鷲の表象に見る 〈二つのアメリカ〉

1. 飛翔の鷲と囚われの鷲

2. 鷲の表象における相違

3.〈二つのアメリカ〉アメリカ合衆国と北米先住民社会

4.「囚われの鷲」 と 「囲まれる土地」、 そして現在

 

11章 「聖なる水の物語」 と 「汚染された水の物語」―トキシック・ディスコースと 「聖なる水」 への回帰

1.『儀式』人と水の物語

2. 水の惑星、地球その汚染と破壊

3. 自然の自浄作用と蘇る水

4. 「聖なる水」 への回帰

 

12章 砂丘の中の 〈エデン〉『砂丘の中のガーデン』 と 「ポスト・エデン」 としてのユートピア

1.「耕作」と農業食料生産のためのガーデンと 「西部のエデン化

2.「緑の楽園」観賞用の庭・植物園・公園

3. アメリカにおけるエデン回復ナラティヴの実態「ユートピア」 から 「ディストピア」へ

4. 旅とユートピア小説

5.「砂丘の中のエデン」「緑の楽園」 から 「砂色のエコトピア」 へ

 

13章 部族主義から汎部族主義へ―抑圧の歴史と汎部族主義

1.『夜明けの家』 と 『いにしえの子』 における汎部族主義

2.『三作の演劇』寄宿学校における同化政策と汎部族主義的共闘への動き

3. 寄宿学校における同化教育の 〈成果〉 と二つの世界の相克

4. シルコウの作品に見られる汎部族主義と「負の汎部族的集団」

5. 汎部族主義と未来への展望

 

14章(終章) 環太平洋を巡る「血の記憶」と惑星的未来への展望

1. アジアから南北アメリカ大陸へ

2. 汎部族主義から地球主義へ

3. 円環的な時間を生きる

4.「土地の物語」の再生口承文化の再活性化

5.「世界の再魔術化」 と 「新しい神話」 の創成

 

結び

 

著者略歴

横田 由理(よこた ゆり)

 

広島市出身。ミネソタ大学大学院教育学部MA 取得、 サウスダコタ州立大学大学院英文学部MA 取得。元広島国際学院大学教授。

 

〈共編著〉『オルタナティヴ・ヴォイスを聴く─エスニシティとジェンダーで読む現代英語環境文学103選』(音羽書房鶴見書店、2011)、『 エコトピアと環境正義の文学日米より展望する広島からユッカマウンテンへ』(晃洋書房、 2008)、『 木と水と空とエスニックの地平から』(金星堂、2007)他。

〈共訳著〉『 環境批評の未来環境危機と文学的想像力』( 音羽書房鶴見書店、 2007)、『 緑の文学批評エコクリティシズム』( 松柏社、 1998)。

〈共著〉『エスニック研究のフロンティア』(金星堂、 2014)、『 カウンターナラティヴから語るアメリカ文学』(音羽書房鶴見書店、 2012)、『バード・イメージ鳥のアメリカ文学』(金星堂、 2010)、 『 ネイティヴ・アメリカンの文学先住民文化の変容』(ミネルヴァ書房、 2002)他。

 

専門は北米先住民文学、環境文学。

 

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